使い手が完成させるバッグ — 10年後の姿を想像してつくる —
ある日、工房にひとりの女性が訪れた。手にしていたのは、10年前に大関鞄工房で購入したショルダーバッグ。深みを増したキャメルの革には艶があり、角には小さな擦れが見られた。けれど、それは劣化ではなく...
ある日、工房にひとりの女性が訪れた。手にしていたのは、10年前に大関鞄工房で購入したショルダーバッグ。深みを増したキャメルの革には艶があり、角には小さな擦れが見られた。けれど、それは劣化ではなく...
工房にミシンの音が響きはじめるのは、午前10時を少し過ぎたころ。カシャン、カシャンというリズムは、まるで楽器のように整っていて、どこか職人たちの呼吸と連動しているようにも聞こえる。その日、入って2年...
まだ工房に朝の光が差し込む前、誰よりも早く作業台に立つ。無言で一枚の革を広げ、手のひらでそっとなでる。「この革、ちょっと頑固だな」小さくつぶやきながら、光にかざす。毛穴の並び、血筋の流れ、肩のしなり...
毎日持ち歩くものって、気がつけば手になじんできませんか?革のバッグや財布には、そんな“育つ楽しみ”があります。たとえば、買ったばかりのバッグは、少し硬かったり、ツヤが控えめだったりする。でも、それを...
お店に並んでいるバッグを見て、「おしゃれだな」と思う瞬間はあると思います。でも、そのバッグがどんなふうに作られているかを、想像してみたことはありますか?私たち職人の仕事は、多くの人にとって見えにくい...
「これ、安いじゃん」「こっちは高いなあ」ネットショッピングでも、リアルな店舗でも、価格はいつも判断の材料になります。「ちょっと高いな…」と感じて、買うのをためらったこと。たぶん誰にでもあると思います...
現代社会では、ほとんどのものに値札がついています。バッグも、食事も、サービスも、すべてが「いくらか?」で語られることが当たり前になっています。しかし、職人の世界に身を置いていると、「これはお金に換え...
ゴールデンウィーク明けの午後、注文の仕上がりを待つ革が数枚、工房のテーブルに並んでいた。その中に、一枚だけ不思議な存在感を放つ革があった。淡いグレージュの牛革。すっと手を滑らせると、なめらかで、少し...
ゴールデンウィークが明けた朝、久しぶりに開けた工房の扉から、ふわりと懐かしい香りが流れ出した。革の匂いだ。ほんの少し甘くて、わずかに土のような渋みもある。これを嗅ぐと「ああ、帰ってきたな」と思う。足...
私は33年以上、鞄づくりに向き合ってきました。手を動かし、革に触れ、仕上がりを見届ける日々。そのなかで、いくつもの技術と、多くの先人の思いに触れてきました。時代が変わり、流行が変わっても、「良いもの...
ゴールデンウィーク3日目の午後。静まり返った工房を後にして、愛犬「みにちゃん」と一緒にすみだ川沿いをゆっくりと歩く。みにちゃんは9歳。ちょっとおてんばだけど、しっかり者の我が家の看板娘だ。川沿いの道...
ゴールデンウィーク2日目。人気のない工房に足を踏み入れると、革とオイルの香りが、いつもより深く胸にしみる。音のない工房は、まるで一冊の写真集のようだ。手を休めた道具たちが、まるで静止画の中に並んでい...
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東京都墨田区緑2-13-5
10:00~18:00
定休日:日、祭日