芸術としての仕事、仕事としての芸術 — 手を動かす、その奥にあるもの — 2025.05.17 BLOG 「いい仕事してますね」この一言を、職人はどれだけの重みで受け止めてきただろうか。決して派手ではない。飾られた言葉も、華やかな舞台もない。けれど「いい仕事」とは、人の暮らしの中で黙って支え続ける力であり、時を経てもなお評価される静かな“芸術”だと、私たちは思っている。工房の一角には、代々受け継がれてきた金具やミシン、木... 詳しくはこちら
子どもが教えてくれた“自由な創造” — 世界で一つだけのショルダーバッグ — 2025.05.16 BLOG ある夏の日の午後、大関鞄工房で開催された「世界で一つだけのショルダーバッグづくり」のワークショップに、ひとりの小学3年生の男の子がやってきた。最初は少し緊張気味だったが、テーブルに並ぶカラフルな革を見た瞬間、目の色が変わった。「これ、空の色みたい!」彼が選んだのは、明るい青と淡いグレーの革だった。大人ならまず組み合わ... 詳しくはこちら
使い手が完成させるバッグ — 10年後の姿を想像してつくる — 2025.05.15 BLOG ある日、工房にひとりの女性が訪れた。手にしていたのは、10年前に大関鞄工房で購入したショルダーバッグ。深みを増したキャメルの革には艶があり、角には小さな擦れが見られた。けれど、それは劣化ではなく、年月の中で育った“風格”だった。「このバッグ、娘に譲ろうと思って。持ち手の縫い目だけ、少し直してもらえますか?」バッグ... 詳しくはこちら
一針に宿る誇り — 縫う、ではなく“結ぶ”という感覚 — 2025.05.14 BLOG 工房にミシンの音が響きはじめるのは、午前10時を少し過ぎたころ。カシャン、カシャンというリズムは、まるで楽器のように整っていて、どこか職人たちの呼吸と連動しているようにも聞こえる。その日、入って2年の若い職人が、ミシンの前で苦戦していた。革が針に食い込み、糸が均等に走らない。焦る気持ちが動作に現れ、余計に目が乱れてい... 詳しくはこちら
革と語る時間 — 革職人が一日で一番静かになる瞬間 — 2025.05.13 BLOG まだ工房に朝の光が差し込む前、誰よりも早く作業台に立つ。無言で一枚の革を広げ、手のひらでそっとなでる。「この革、ちょっと頑固だな」小さくつぶやきながら、光にかざす。毛穴の並び、血筋の流れ、肩のしなり具合。すべてに目を凝らしながら、革が語りかけてくるのを待っている。革は生き物だった。牛として生きてきた時間が、そのまま質... 詳しくはこちら
“一緒に育つ”ものを持ってみる 2025.05.12 BLOG 毎日持ち歩くものって、気がつけば手になじんできませんか?革のバッグや財布には、そんな“育つ楽しみ”があります。たとえば、買ったばかりのバッグは、少し硬かったり、ツヤが控えめだったりする。でも、それを毎日使っていると、自然と手のあとがつき、色が深まり、革がやわらかくなってくる。小さな傷も、雨に濡れた日も、あなたと一緒に... 詳しくはこちら
職人の仕事は、見えないところにある 2025.05.11 BLOG お店に並んでいるバッグを見て、「おしゃれだな」と思う瞬間はあると思います。でも、そのバッグがどんなふうに作られているかを、想像してみたことはありますか?私たち職人の仕事は、多くの人にとって見えにくいものです。完成したバッグだけが目の前にあって、その裏側でどんな工程があったのかは、なかなか伝わりません。たとえば、バッグ... 詳しくはこちら
安いから買う、高いから迷う。その前に考えたいこと 2025.05.10 BLOG 「これ、安いじゃん」「こっちは高いなあ」ネットショッピングでも、リアルな店舗でも、価格はいつも判断の材料になります。「ちょっと高いな…」と感じて、買うのをためらったこと。たぶん誰にでもあると思います。でも、そんなとき、ちょっとだけ立ち止まって考えてみてほしいことがあります。「この値段の裏に、何があるんだろう?」という... 詳しくはこちら
「貨幣価値に変えがたいもの」― 手間と想いが宿る価値について ― 2025.05.09 BLOG 現代社会では、ほとんどのものに値札がついています。バッグも、食事も、サービスも、すべてが「いくらか?」で語られることが当たり前になっています。しかし、職人の世界に身を置いていると、「これはお金に換えられるようなものじゃない」と感じる瞬間があります。たとえば、あるお客様のためだけに作った特注バッグ。そこには、色選び、サ... 詳しくはこちら
休暇ブログ5 『いつか誰かの人生を運ぶ、ひとつの鞄』 2025.05.08 BLOG ゴールデンウィーク明けの午後、注文の仕上がりを待つ革が数枚、工房のテーブルに並んでいた。その中に、一枚だけ不思議な存在感を放つ革があった。淡いグレージュの牛革。すっと手を滑らせると、なめらかで、少しひんやりしていて、品のある柔らかさがあった。この革で作る予定のバッグは、還暦を迎える女性への贈り物。「派手じゃないけれど... 詳しくはこちら
休暇ブログ4 『連休明けのはじまりは、革の香りから』 2025.05.07 BLOG ゴールデンウィークが明けた朝、久しぶりに開けた工房の扉から、ふわりと懐かしい香りが流れ出した。革の匂いだ。ほんの少し甘くて、わずかに土のような渋みもある。これを嗅ぐと「ああ、帰ってきたな」と思う。足を踏み入れると、静まり返った空間に、革の存在だけがしっかりと残っているのを感じる。作業台の上には、少し乾いた手触りのタン... 詳しくはこちら
伝え続ける覚悟 ― 技術と心を次代へ 2025.05.06 BLOG 私は33年以上、鞄づくりに向き合ってきました。手を動かし、革に触れ、仕上がりを見届ける日々。そのなかで、いくつもの技術と、多くの先人の思いに触れてきました。時代が変わり、流行が変わっても、「良いものをつくる」ための本質は揺らぎません。けれど、黙っていれば、いつかこの技術も、心も、消えていってしまうかもしれない。だから... 詳しくはこちら