夏の名残を感じつつも、少しずつ空気が澄んで秋の気配が漂ってきました。 鞄づくりの現場では、この季節ならではの素材選びや色合わせが始まります。

秋は「深み」を表現できる季節です。 落ち着いたブラウン、柔らかなベージュ、そして差し色になるワインレッドやマスタード。革の質感も、夏よりしっとりとしたものを選びたくなります。

新作づくりは、デザインを描くところから始まりますが、革に触れ、裁ち、縫い合わせる過程でまた新しい発想が生まれるのが不思議です。 図面通りにいかないことも多いのですが、その「予定外のひらめき」こそが作品に個性を宿すのだと感じています。

「この秋に持ちたい」と思っていただける鞄を目指して、工房の一針一針が進んでいます。 季節が巡るように、ものづくりもまた新しい表情を見せる――秋は、そんな創作の楽しさにあふれています。