使い手が完成させるバッグ — 10年後の姿を想像してつくる —
ある日、工房にひとりの女性が訪れた。
手にしていたのは、10年前に大関鞄工房で購入したショルダーバッグ。深みを増したキャメルの革には艶があり、角には小さな擦れが見られた。けれど、それは劣化ではなく、年月の中で育った“風格”だった。
「このバッグ、娘に譲ろうと思って。持ち手の縫い目だけ、少し直してもらえますか?」
バッグが母から娘へ受け継がれる瞬間。
作り手として、これほど嬉しいことはない。
革製品は新品のときが一番美しいと思われがちだが、大関鞄工房の職人たちは、「完成は使い手の時間の中にある」と信じている。
どれほど丁寧につくっても、それは“はじまり”にすぎない。
革は、日々使われ、手に触れ、空気にさらされ、陽を浴びることで、表情を変え、やわらかくなり、唯一無二の姿へと変わっていく。
「この革が、こんな色になるなんて」
職人自身が驚かされることもある。革は生きている。使い手の暮らしを映し、使い方や場所によってまったく異なる成長を見せる。
たとえば、小さな子どもを育てている母親のバッグには、しなやかで丸みのある変化が現れる。
通勤で毎日肩にかけられていた鞄には、取っ手の根元に強さと疲れが同居する。
旅好きな人のリュックには、異国の空気と傷跡が刻まれている。
すべてが「使う人の人生そのもの」なのだ。
だから、大関鞄工房のものづくりは、少しだけ“余白”を残して仕上げられる。
完璧に磨きすぎず、硬く固めすぎない。
使い手が少しずつ自分の手で“完成させていく”ことを想定して、設計と素材を選んでいる。
「最初から完成されたものは、飽きられるんですよ」
職人のひとりが笑いながらそう話す。
「革が変わっていく姿を、驚きと愛着をもって見守ってくれるお客さんと出会えるのが、一番の喜びです」
道具ではなく、人生に寄り添う“相棒”をつくること。
芸術とは、ただ鑑賞されるものではなく、「時間とともに生きるもの」だとしたら──
この工房が生み出すバッグたちは、間違いなくその定義にふさわしい。
そしてまた今日、誰かの手に渡ったひとつのバッグが、静かに育ち始める。
その10年後を想像しながら、職人は一針を丁寧に縫い込んでいく。
国産ハンドメイドレザーバッグ | Squeeze - スクィーズ
レザーバッグブランドSqueezeでは「物の価値ではなく、そこに込められた職人や人の想いの価値を大切にしていきたい」という考えに基づき、
メイドインジャパンにこだわり「バッグを持つ人に信頼と感動を与えたい、そんな商品を世の中に出せたら」という想いで日々勉強中です。
オーダーメイドや革製品の修理もぜひお気軽にご相談ください。
屋号 | 株式会社大関鞄工房 |
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住所 |
〒130-0021 東京都墨田区緑2-13-5 |
電話番号 | 03-5669-1408 |
営業時間 |
10:00~18:00 定休日:日、祭日 |
代表者名 | 大関 敏幸 (オオゼキ トシユキ) |
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