休暇ブログ5 『いつか誰かの人生を運ぶ、ひとつの鞄』
ゴールデンウィーク明けの午後、注文の仕上がりを待つ革が数枚、工房のテーブルに並んでいた。
その中に、一枚だけ不思議な存在感を放つ革があった。
淡いグレージュの牛革。すっと手を滑らせると、なめらかで、少しひんやりしていて、品のある柔らかさがあった。
この革で作る予定のバッグは、還暦を迎える女性への贈り物。
「派手じゃないけれど、長く寄り添えるものにしてほしい」
依頼主のそんな一言が、ずっと頭に残っている。
鞄というものは、不思議な存在だと思う。
何十年も使われることもあれば、たった一度の旅のために作られることもある。
でも、どちらも「誰かの人生の一部」になる。
過去に一度だけ、革に名刺サイズの焼き印を入れてほしいという依頼を受けたことがあった。
理由を聞くと、「大切な人が天国に旅立った日と名前を残しておきたい」という。
その方は、毎朝その鞄に手を触れながら、「今日もがんばろう」と声に出すのだそうだ。
そんなふうに、自分の手から生まれた鞄が、誰かの人生の支えになっていること。
それを想像すると、革を選ぶときの手つきも、針を進めるリズムも、少しずつ優しくなる。
今、目の前のこの革も、やがて誰かの肩に寄り添い、時には旅先の空気を吸い、時には思い出の中に静かに佇むことだろう。
みにちゃんが足元で静かに眠っている。
彼女の穏やかな寝息と、遠くから聞こえるミシンの試運転音が、工房に優しい時間を運んでくれる。
今日つくる一つの鞄が、誰かの人生をそっと運ぶ。
そんな想いを胸に、また手を動かし始めた。
国産ハンドメイドレザーバッグ | Squeeze - スクィーズ
レザーバッグブランドSqueezeでは「物の価値ではなく、そこに込められた職人や人の想いの価値を大切にしていきたい」という考えに基づき、
メイドインジャパンにこだわり「バッグを持つ人に信頼と感動を与えたい、そんな商品を世の中に出せたら」という想いで日々勉強中です。
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