偶然の出会いが生み出す、一生モノの革
革職人をやっていると、時々「これは運命だ」と思えるような出会いがある。
それは人との出会いだったり、革との出会いだったり、思いもよらない偶然が重なって生まれるもの。
今日は、そんな「偶然の出会い」から生まれた一つの物語をお話ししようと思います。
あの日、工房に訪れた一人の男性
数年前のある日、工房の扉が静かに開いた。
入ってきたのは、50代くらいの男性。少し緊張した面持ちで、手にひとつの古いバッグを持っていた。
「すみません。このバッグ、修理できますか?」
差し出されたのは、年季の入った黒いクロコダイルのクラッチバッグ。
かなり使い込まれていて、革の角は擦り切れ、金具もくすんでいた。
「もうボロボロで…でも、捨てられなくて」
聞けば、そのバッグは亡くなったお父様の形見 だったそうだ。
仕事一筋だった父が、大事な商談の時にだけ持ち歩いていた特別な品。
それを引き継ぎ、できればまた使える状態にしたい という。
正直なところ、状態はかなり厳しかった。
でも、何とかしてこのバッグを蘇らせたい。
そんな気持ちで、私は一つの提案をした。
「このクロコダイルの革、まだ生きています。バッグとしては難しいですが、新しい形にできますよ」
バッグから財布へ – 受け継がれる革
慎重にバッグを解体し、傷んでいない部分の革を選び出す。
そして、その革を使って長財布とキーケースを作ることにした。
古いバッグの金具も再利用し、なるべく元の雰囲気を残す。
「お父様が持っていたものの一部を、新しい形で使えるようにする」
そんな想いで、何度も調整を重ねた。
数週間後、完成した財布とキーケースを手渡した時、
男性はそっと手に取って、じっと眺めた。
「すごい…これ、父のバッグの革ですよね?」
懐かしそうに革をなでながら、しばらく言葉を失っていた。
最後にポツリと、
「また、父と一緒にいるみたいです」
と笑った。
この時、私は思った。
「革は、ただの素材じゃない。人の想いをつなぐものなんだ」
偶然の出会いが生んだ、新しい命
もし、あの日あの男性が工房に来なかったら、
もし、私がそのバッグを修理できないと断っていたら、
この財布とキーケースは、生まれなかったかもしれない。
でも、偶然の出会い が、革に新しい命を与えた。
革は使い込むほどに味わいが増し、持ち主の人生とともに時を刻む。
そして、時にはこうして「次の世代へと受け継がれるもの」になる。
あなたの手元にも、そんな「捨てられない革」はありませんか?
もしあるなら、一度ご相談ください。
もしかしたら、その革も、新しい形で生まれ変わるかもしれません。
偶然が生み出す、特別なもの
偶然の出会いが、新しいものを生み出すことがある。
それは、革も、人とのつながりも同じ。
この工房が、誰かにとっての「偶然の出会いの場所」になれたら。
そんな想いで、今日も革と向き合っています。
国産ハンドメイドレザーバッグ | Squeeze - スクィーズ
レザーバッグブランドSqueezeでは「物の価値ではなく、そこに込められた職人や人の想いの価値を大切にしていきたい」という考えに基づき、
メイドインジャパンにこだわり「バッグを持つ人に信頼と感動を与えたい、そんな商品を世の中に出せたら」という想いで日々勉強中です。
オーダーメイドや革製品の修理もぜひお気軽にご相談ください。
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