革と語る時間 — 革職人が一日で一番静かになる瞬間 —
まだ工房に朝の光が差し込む前、
誰よりも早く作業台に立つ。
無言で一枚の革を広げ、手のひらでそっとなでる。
「この革、ちょっと頑固だな」
小さくつぶやきながら、光にかざす。
毛穴の並び、血筋の流れ、肩のしなり具合。
すべてに目を凝らしながら、革が語りかけてくるのを待っている。
革は生き物だった。
牛として生きてきた時間が、そのまま質感として残る。
傷、しわ、たるみ──どれもが唯一無二の履歴。
工場で大量生産された素材にはない“物語”がそこにはある。
「どこを主役にするか。それは、革が決めるのだ」
“選革(せんかく)”の時間は、作るというよりも“聞く”作業に近い。
たとえば、同じ茶色の革でも、赤みが強い部分、渋みのある部分がある。
ツヤの出方や手ざわりも微妙に違う。
すべてを均一に整えてしまえば、確かにきれいにはなる。だがそれは、革から奪う行為でもある。
「素材の個性を活かす」こと。
それが大関鞄工房が貫いてきた信条だ。
この朝の時間に決まるのは、「どう作るか」ではない。
「どう使われるべきか」、その答えを、革の表情から読み取ること。
それこそが、長く使われ、愛されるバッグづくりの第一歩となる。
やがて朝日が射し、工房にミシンの音が鳴り始める。
だがこの静かな時間にしか生まれない決断が、すでに作品の輪郭を決めていた。
芸術とは、派手な表現や強い主張だけではない。
革の声に耳を澄まし、最もふさわしい場所へと導くその手仕事もまた、
確かに「静かなる芸術」と呼ぶにふさわしいのだ。
国産ハンドメイドレザーバッグ | Squeeze - スクィーズ
レザーバッグブランドSqueezeでは「物の価値ではなく、そこに込められた職人や人の想いの価値を大切にしていきたい」という考えに基づき、
メイドインジャパンにこだわり「バッグを持つ人に信頼と感動を与えたい、そんな商品を世の中に出せたら」という想いで日々勉強中です。
オーダーメイドや革製品の修理もぜひお気軽にご相談ください。
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