道具と暮らし④ ― 「言葉に残らなかった教え──背中で学んだこと」
名人と過ごしたあの時間の中で、教えられたことは数え切れません。
でも、振り返ってみると、名人が口にした言葉はそんなに多くなかったように思います。
むしろ、「言葉にしなかったこと」の方が、ずっと深く心に残っているのです。
たとえば、誰よりも早く工房に入り、誰よりも遅くまで残っていたこと。
作業中、道具の置き方ひとつにも乱れがなかったこと。
「見せるつもりなんてなかった」と言いながら、手元を決して隠さなかったこと。
そのひとつひとつが、まるで「生きた教科書」のようでした。
名人の動きには、迷いがなかった。
でもその裏に、何千回、何万回と失敗したであろう時間があったことは、見ていて自然と伝わってきた。
そしてそれは、決して言葉では説明できない“重み”でした。
ある日、私が失敗して落ち込んでいたとき、名人は何も言わず、黙って刃を研いでくれたことがあります。
それが、どんな言葉よりもありがたかった。
「自分の手で直してみろ」という無言のメッセージだったのだと、今ならわかります。
言葉は便利だけれど、ときに邪魔にもなる。
職人の世界では、「見て、盗んで、感じろ」がすべてなのかもしれません。
本当に大切なことは、案外、言葉にならない。
それでも、しっかりと胸に残っている。
それが、名人からの一番の教えでした。
国産ハンドメイドレザーバッグ | Squeeze - スクィーズ
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